交通事故の慰謝料
交通事故の慰謝料
Q慰謝料の金額はどのような金額になりますか
A
交通事故による怪我で,入院・通院をされていた方の慰謝料については,次のとおり計算していくことになります。
まず,自賠責基準というものが存在します。
自賠責基準によると,1日当たり4300円とされています(令和2年4月1日以降に発生した事故の場合)。
なお,令和2年4月1日より前に発生した事故については,1日当たり4200円とされています。
そして,この4300円に,次の1か2のいずれか少ない方を数字を掛け算することになります。
1 全治療期間の日数
2 実通院日数(入院日数+実際の通院日数)×2
例えば,全治療期間の日数が90日で,実通院日数が20日の場合,90日>20日×2となるため,4300円×40日=17万2000円が,慰謝料額となります。
次に,通称「青い本」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター発行)に記載されている基準が存在します。
この基準は,青い本に掲載されている入・通院慰謝料表を基準として,上限額と下限額を算出し,その範囲内で妥当な金額を決定するとされています。
そして,症状が重い場合については,上限額の2割増し程度の金額までは加算できるとされています。
なお,通院実日数が少ない場合には,修正通院期間が適用されるとされています。
どのような場合に,修正通院期間が適用されるかについて,「通院が長期化し,1年以上にわたりかつ通院頻度が極めて低く1か月に2~3回程度の割合にも達しない場合,あるいは通院は続けているものの治療というよりむしろ検査や治療経過の観察的色彩が強い場合などとされています。
修正通院期間については,通院実日数×3.5とされています。
さらに,「赤い本」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行)に記載されている基準が存在します。
この基準には,表が2つあり,それぞれ別表Ⅰと別表Ⅱと呼んでいます。
そして,傷害慰謝料については,原則として入通院期間を基礎として別表Ⅰを使用するとされています。
通院が長期にわたる場合には,症状などをふまえて実通院日数の3.5倍程度を修正通院期間とするとされています。
むち打ち症で他覚所見がない場合等は,入通院期間を基礎として別表Ⅱを使用するとされています。
なお,通院が長期にわたる場合には,症状などをふまえて実通院日数の3倍程度を修正通院期間とするとされています。
このように,入院・通院の慰謝料には,様々な基準があります。
Q交通事故で認められる慰謝料は,どのようなものがありますか。
A
交通事故で問題となる慰謝料としては,入通院の苦痛に対する入通院慰謝料のほかに,後遺障害が認定された際に認められる後遺症慰謝料というものがあります。
後遺障害等級14級が認定された場合,赤い本によれば110万円の後遺症慰謝料とされており,青い本によれば90万円~120万円の後遺症慰謝料とされています。
また,1級・2級などの重度の後遺障害の場合には,近親者の方も介護などで多大な苦痛を受けることから,近親者慰謝料というものが認められる場合もあります。
一方,交通事故被害者の方が死亡された場合には,亡くなられた方の属性によって死亡慰謝料の金額が判断されています。
例えば,一家の生計を支えるなどの一家の支柱とされている方が無くなられた場合には,赤い本によれば2800万円の死亡慰謝料とされており,青い本によれば2800万円~3100万円の死亡慰謝料とされています。
もっとも,上記の各書籍に記載されている慰謝料は,目安金額が示されているものであり,実際の裁判では個々の事案に応じて具体的に判断されることとなります。
Q物損に関する慰謝料
A
よくあるご相談内容の一つとして,交通事故で車が破損したが,それに対して慰謝料を請求することはできないのかという相談があります。
これに対しては,原則として認められないとされています。
もっとも,例外的に,被害者の方が財産価値以外に考慮に値する必要があるような特別な事情がある場合には,慰謝料が認められる余地もあるようです。
なお,このことを述べた裁判例として,大阪地裁平成12年10月12日判決がありますが,同裁判例は,霊園において墓石に衝突し,墓石が倒壊し骨壺が露出するなどした事案であり,特別な事情が認められやすかったのだとも考えられます。